日本の広告業界はデジタル化の急速な進展と多様な働き方の拡大により、大きな変革期を迎えています。男女別では女性の管理職登用が限定的で、長時間労働や育児との両立支援不足が課題です。雇用形態では正規と非正規の格差が顕著で、フリーランスも増加しています。今後はデジタルスキルの習得や多様性推進が不可欠です。就職活動では、最新スキルや企業のダイバーシティ施策を重視し、自分に合う職場選びが重要となります。
広告業の産業構造と全体的な特徴
日本の広告業界は、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などの伝統的なメディアから、インターネット広告、SNS、動画配信プラットフォームなどのデジタルメディアへと急速にシフトしています。特に、インターネット広告は急成長を遂げ、広告費の大部分を占めるようになっています。これに伴い、広告代理店や制作会社は、デジタルマーケティングやデータ分析、コンテンツ制作などの新たなスキルを求められるようになっています。
男女別の課題と最新動向
男性中心の構造とその変化
広告業界は長らく男性中心の構造が続いていましたが、近年では女性の活躍が進んでいます。特に、クリエイティブディレクターやマーケティング戦略職など、以前は男性が多かった職種にも女性の登用が増加しています。これは、ジェンダー平等の推進や多様性の重要性が認識されるようになった結果です。
女性のキャリア形成と壁
一方で、女性は制作や企画、広報、アシスタント業務などに多く従事しており、昇進の機会やリーダー職への登用は依然として限定的です。長時間労働や深夜対応がキャリア継続の障壁となることが多く、育児との両立支援制度の整備が課題となっています。
雇用形態別の課題と現状
正規雇用と非正規雇用の格差
広告業界では、正規雇用と非正規雇用の格差が顕著です。特に、若年層や女性の多くが非正規雇用であり、賃金や福利厚生、昇進の機会において不平等が存在します。このような格差は、業界全体の人材確保や定着率に影響を及ぼしています。
フリーランスや契約社員の増加
また、フリーランスや契約社員として働く人々も増加しています。これらの働き方は、柔軟性や自由度が高い一方で、収入の不安定さや社会保障の不足などの課題も抱えています。業界全体で、これらの働き方に対する理解と支援が求められています。
今後の課題と展望
デジタル化と人材の再教育
広告業界のデジタル化が進む中で、従来のスキルだけでは対応が難しくなっています。データ分析やAI、SNSマーケティングなどの新たなスキルを持つ人材の育成が急務です。企業は、社員の再教育やスキルアップの機会を提供する必要があります。
ダイバーシティとインクルージョンの推進
多様な人材が活躍できる環境を整備することが、今後の業界の成長には不可欠です。性別、年齢、国籍、障害の有無などに関係なく、すべての人が平等に活躍できる職場づくりが求められています。
就職活動に役立つ情報とアドバイス
求められるスキルと資格
広告業界では、デジタルマーケティングやデータ分析、コンテンツ制作などのスキルが求められています。これらのスキルを身につけることで、就職活動での競争力が高まります。また、関連する資格や研修を受けることも有益です。
企業選びのポイント
企業の文化や価値観、働き方、福利厚生などをよく調査し、自分の価値観と合致する企業を選ぶことが重要です。特に、ダイバーシティやインクルージョンに積極的な企業を選ぶことで、長期的なキャリア形成がしやすくなります。
広告業の常用労働者数
広告業における常用労働者数は、2012年以降、デジタル化や景気動向の影響を受けながら推移してきました。過去最大値は2017年7月に記録した12.3万人で、これはテレビや新聞などの既存メディアに加え、インターネット広告の拡大により業界が活況を呈していた時期と一致します。
2025年3月時点では、そのピーク時の94.6%にあたる約11.6万人と、やや減少しつつも高水準を維持しています。これは、コロナ禍を経て企業の広告出稿が一時的に縮小したものの、その後、デジタル分野を中心に需要が回復していることを反映しています。特にインフルエンサーマーケティング、SNS広告、動画コンテンツ制作の分野では新たな雇用が生まれています。
一方で、従来のマスメディア広告の縮小に伴い、業界内では業務内容や求められるスキルに変化が生じ、特にデジタル領域に対応できる人材への需要が高まっています。その結果として、人員の入れ替わりや業種間の再編も進んでいます。

月別の現金給与額
現金給与額の総額は、2012年から2025年の間で緩やかな変動を続けています。2014年12月には過去最高の93.6万円を記録しましたが、2025年3月時点ではその94.9%にあたる約88.8万円となっており、比較的安定した水準を保っています。
この給与の安定は、広告業がデジタルシフトを進める中でも一定の高スキル人材を確保し続けていることに起因します。特にマーケティング戦略立案、Web広告運用、データ分析などの専門領域においては、高度な知識や経験を持つ人材が必要とされ、相応の賃金水準が維持されています。
一方で、テレビ・新聞・雑誌などのマスメディア向け広告市場は縮小傾向にあり、それに伴い従来型の制作職や営業職の賃金は横ばい、もしくはやや低下傾向を示しています。代わりに、Webディレクターやコンテンツプロデューサー、デジタルアナリストといった職種へのシフトが見られ、給与構造そのものが変化しつつあります。

男女別、雇用別の時給
時給は、2012年から2025年にかけて徐々に上昇し、2019年6月に過去最高の5,740円/時間を記録しました。2025年3月時点では、そのピーク時の95.5%にあたる約5,480円となっており、高水準を維持しています。
この時給の高さは、広告業が知識集約型・創造性重視の産業であることが背景にあります。特にデジタルマーケティング、データ解析、クリエイティブディレクションなど、専門性の高い職種では成果や経験に基づいた報酬体系が一般的であり、全体の時給水準を押し上げています。
また、従来型のマス広告中心のビジネスモデルから、SNSや動画広告、インフルエンサーマーケティング、SEO戦略などデジタル分野への転換が進んだことで、より技術的・戦略的なスキルを持つ人材への需要が増加。結果として、そのような人材に対する高時給のオファーが相次ぎ、業界全体の平均時給を高める要因となりました。

男女別、雇用別の労働時間
実労働時間数の総数は、2012年から2025年にかけて変動を見せています。過去のピークは2015年7月に記録した184時間であり、これは広告業界が従来のテレビ・新聞・雑誌などマスメディアを中心に、制作や営業が極めて多忙で長時間労働が常態化していた時期です。
2025年3月時点では、ピーク時の87.9%にあたる約162時間となっており、全体としてはやや労働時間が短縮されている傾向にあります。これは働き方改革の浸透、ITツールの活用、在宅勤務の普及などにより業務効率が改善されたことが背景にあります。また、若手人材の離職を防ぐため、企業側が長時間労働の是正を意識するようになったことも大きい要因です。


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